カルトナージュの道具たち

 カルトナージュに必要な道具は、一般家庭に置いてあったり、比較的手に入りやすいものが基本です。新しく買い求めるにしても、文具店、画材店、ホームセンターなどでほとんど見つけることができます。選択肢が多すぎて、かえって迷ってしまうかもしれません。

 良い道具に出会えると、飛躍的に使い勝手が良くなったり、制作が楽になったり、仕上がりが綺麗になったりします。私も使いやすい道具を求めて試行錯誤の日々です(道具マニアでもあるので探究心は尽きません……)。

 ではどれが良い道具なのでしょうか? ……もっともすぐれた道具は、手になじむ道具だと考えています。人それぞれ手指の大きさや形、力の入り方、クセなどは千差万別。本人にとって使いやすい道具こそが一番良い道具なのです。

 ただ、道具選びの際に、押さえておくと良いポイントはあります。私が気をつけていること、気に入っているものをご紹介しますので、参考にして頂ければ幸いです。

★★★=絶対必要
★★☆=なるべく用意したい
★☆☆=あると便利、作品によって必要になるもの

カルトナージュの基本道具
(写真右から)

裁ちばさみ ★★☆

 布貼りをする場合に使います。スキバルやジョリパピエなど紙素材を使う場合は不要です。大物を作る時(布を大きく切る時)にはあると便利ですが、上質なクラフトはさみなら代用することもできます(私は布も近正のクラフトはさみで切っていることが多いです)。

 長い直線を切るときは24cmの裁ちばさみ(布切はさみブラック)、さほど長くない時は小学校の裁縫セットに入っていた裁ちばさみ、短い直線や曲線、細かい部分にはクラフトはさみを使っています。

クラフトはさみ ★★★

 切れ味さえ良ければ、ご家庭にある普通のはさみでOKです。

 写真にうつっているのはプラスのフィットカットです。500円以下のクラフトはさみならこれが一番オススメ! 切れ味がよく、丈夫で長持ち、グリップも握りやすくて気に入っています。

 1,000円以上出しても構わない! ということでしたら、近正のファンクラフト(FNSA-160)に勝るはさみにはまだ出会ったことがありません。切れ味はもちろん、小回りも利いてとても使いやすく、愛用しています。うちの教室用に置いているのもこれで、生徒さんたちも愛用されています。うちの教室は黄色だらけです(笑)

細工はさみ ★★☆

 先が鋭く尖っている薄刃のはさみです。角の処理など細かいところに大活躍! 1本あると細かい作業が格段に楽になります♪

 写真にうつっているのは北欧フィンランド産、フィスカース社の細工はさみです。フィスカースは世界的にも有名ですし、カルトナージュをなさる方の間でも大人気♪ 先がとがっていて小回りがよくききます。

 国産では近正のファンクラフト(FB-200)、クロバーのカットワークはさみも気に入っています。うちの教室用に置いているのは近正で、生徒さんもこの切れ味に惚れ込んで使っている方が多いです。

目打ち ★☆☆

 金具などをつける穴をあけたり、小さな隙間に糊を塗って補修する時などに使えます。これは特にこだわりなく、100円均一のものを使っています。先が丸いな~と思ったらヤスリで研ぎます。千枚通しのように太さが変わらないものと、根元に向かって太くなっているもの、2種類を用意しておくと穴のサイズが調節できて便利です。

カッターナイフ 大 ★★★
カッターナイフ 小 ★★☆

 カルトナージュで主に使われているのは、日本製の刃が折れるカッターとフランス製の替え刃式カッターで、私は日本製オルファの黒刃を愛用しています。フランスでも日本のカッターが人気なんだそうですよ。「やっぱり刃物は日本製!」と仰っていました。

 フランス製のカッターはグリップが安定して長い直線もブレないそうです。日本製のカッターは切れ味がすばらしく、鈍ったらすぐ折って取り戻せます。このあたりはお好みで使いやすいものを!(ちゃんと切れれば何でも良いのです)

 日本製カッター(大)の場合は、刃を出してネジでしっかり留めるものが安全です。スライダー式の(いわゆる普通の)カッターだと、構造的に刃がガタつきやすいものが多かったり、力が入っている時に誤ってスライダーをさわると危険です。

 私はカルトンを切る時にも小さいほうのカッターを使っていることが多いですが、長い直線や3mmなどの厚いカルトンを切る時は刃が薄くてしなることがあるため、大に持ちかえたりします。力が入りやすい人は大のほうが使いやすいと思います。

シャープペンシル ★★★

 均一な線が引ければどんなシャーペンでも構いませんが、私のイチオシは製図用の0.3mm(芯はB)です!定規に沿って細い線をくっきり書くのに適しています。

 私はステッドラーの製図用シャープ925を学生時代から愛用しています♪レッスンでお使い頂いているのはぺんてるのグラフギア500です。

 カルトナージュは建築物の製図ほど精密じゃなくていいので、あまりグレードにはこだわらなくていいと思います。

へら ★★★

 いろんな形のへらがありますが、カルトナージュ用には写真のような先細へら(プリヨワール)を使っています(大きな平面には平面へら(パヴェ)もあると便利)。材質はプラスチックやテフロンなどもありますが、私はしっとりと手に馴染んで頑丈なボーンが好きです。プラスチックは滑りやしなりが気になって力が入れにくい……。

 へらの使い勝手によって制作の効率が全然違います。これだけは特にこだわって選びましょう!!★5つ付けてもいいくらい大事です。

 実を言えばカルトナージュを始めたばかりの時は、何もわからずに手芸用の印つけのへらや、小児用の粘土へらを使っていました……。もちろんそれらでも出来ないわけではありません。が、プリヨワールに出会った時は、その使いやすさに衝撃!!これは代用の効かないものだと身に染みて実感しました。

筆・刷毛 ★★★

 糊(ボンド)を塗るのに使います。最初の1本には20~30mm程度の平筆が使い勝手が良いです。あとは必要に応じて、細いものや太いものを追加します。大物を作る時はローラーやスポンジブラシなどがあると便利です。

 油彩用の筆を使います。水彩用ではコシが弱すぎて糊の粘りに負けてしまいます。合成繊維でも良いですが、ものによってコシが強すぎたり弱すぎたり、差が大きすぎて選ぶのが大変かもしれません(ちょうど良いものに出会えれば、天然毛より安価な場合があります)。オススメは豚毛ですが、同じ豚毛でも産地によって品質がバラバラです。きちんとしたメーカーのものを選びましょう!

 基本的に筆は消耗品ですので、手頃な価格帯のものを選んで、傷んだら換えてしまいましょう。

カルトナージュの基本道具/筆・刷毛

 消耗品ゆえに常に使いやすいものを求めてあれこれ試しています。

 一番右奥は、フランスLEONARD社製の平筆。アトリエ・ペルシュのカルトナージュ教室にご参加頂いた方にはお馴染みかと思います。これはもう本当に使いやすい! 穂先のサイズもちょうどよく、細かい部分にも届きやすいし、豚毛の弾力が糊の粘りに負けず、しかも丈夫♪ ただご覧の通り使い込みすぎてもう柄がボロボロなんです。まだまだ穂先は元気なので、ヤスって塗装しなおそうかなーと思いつつ……。1本840円とそれなりのお値段なのと(といっても画筆の中では安い方ですが)、輸入品で安定的に手に入らないのがネックです。

 右から二番目、ホームセンターで見つけた「なめらか工作用」と書いてある平筆。1本300円くらい? プラスチックで束ねてあって、錆びなさそうだと思って買ったものです。穂先の腰があまり強くないので木工用ボンドにはちょっと使いづらく感じました。L'Eclat de Verreの糊のようにサラッとしたものは腰が強いと逆に塗りにくいので、こういう筆のほうがいいかもしれません。

 中央、ホルベインのハイラックブラシです。短軸101号、定価は300円くらい。国内の有名メーカー品だから安定的に手に入るのが最大のメリット! 豚毛の質があまり良くないのは廉価品だからしょうがないですね……。柄はすごく持ちやすいです。細かいところを塗るには穂先が長いかな。今度カットして使ってみようかと思っています。あと、濡れると獣臭いです(笑)。

 左の2本は生徒さんに教えて頂いたもので、ダイソーの100円商品です。あまり期待していませんでしたが、これがとても使いやすい! 特に一番左の化繊の筆が良いです。腰の強さも穂先の揃い方もOK♪ 毛の抜けもほとんどなくてびっくり! 見かけるたびに5~10本ずつまとめ買いして、今はこれをメインで使っています。最初ちょっと薬品臭が強いですが、そのうち抜けます。

クラフトテープ(水張りテープ) ★★★

 切手のように糊面がある紙テープです。これがどこで手に入るかわからず悩まれる方が多いみたいですね。画材店の水彩用品売り場に“水張りテープ”という商品名で置かれています(緑のものが多く、茶や白は置いていないところもあります)。

 フランス製のクラフトテープは200m巻き、日本の画材店にあるものは50m巻きくらいが一般的です。小さな作品でも表裏貼っていると結構な消費量ですので、お近くに取扱店が無くこまめに買い足せない場合は、50m巻きなら2~3本まとめて買っておくといいかもしれません。

 湿気で貼りついてしまうので保管には注意してください!乾燥材を入れた缶やジップ袋、湿気を吸ってくれる桐素材の箱や引き出しに保管すると良いそうですよ♪(私はジップ袋に放り込んでいます)

 ちなみにフランス製はペラペラの薄い筋入りクラフトで、布を貼った後にクラフトテープの段差が出にくいのがメリット。日本のものは筋入りクラフトよりちょっとしっかりした薄手のクラフト紙です。私はテープの段差が出てしまうのが嫌なので、強度的に問題ない場合は表には貼りません。

クリップ ★★☆

 糊で貼った部分が定着するまでクリップで押さえておきます。洗濯バサミでOKです。ギザギザがついているものや挟む力が強いものは、クリップの跡がつくことがありますので、間にハギレを挟んで使います。

 私は100均のウッドクリップ(大)を愛用しています♪ギザギザが無くて挟む力もちょうどいいです。レッスンでもお使い頂いているので、計100個くらい持っています(笑)。

カッターマット ★★★

 A3サイズ以上で、少し厚みのあるものを選びましょう。硬いものより少し弾力のあるもののほうが使いやすいです。良いマットを使うと刃の保ちもいいですよ♪

 レッスン用はオルファのA3、自宅用はオルファのA2を使用しています。表面に微細な凹凸があり、紙がすべりにくく使いやすいです。

 生徒さんたちには折りたためるカッターマットが持ち運びやすくて人気です。